分野5 不動産 やや専門 計算あり

不動産

土地と建物のルールと税金。図でやさしく。

🎯 このレッスンのゴール

  1. 不動産登記のしくみと、価格4種のちがいが分かる
  2. 宅建業法・借地借家法のさわりをつかむ
  3. 建蔽率・容積率を式で計算できるようになる
  4. 取得・保有・譲渡それぞれの不動産の税金を整理できる

こんにちは、先生役の「ブタコ先生」です。不動産って言葉だけでむずかしそうに感じますよね。でも大丈夫。じつは「土地と建物のルール」と「かかる税金」の2本柱を押さえれば、FP3級の不動産はぐっとラクになります。計算も、式さえ覚えれば中学レベルの割り算です。一緒に見ていきましょう。

1. 不動産の基礎 ― 登記と価格4種

不動産とは、かんたんに言うと土地と建物のことです。まずは「その不動産が誰のもので、どんな状態か」を公に記録する不動産登記(とうき)から見ていきましょう。

不動産登記のしくみ

不動産登記は、法務局にある登記記録(登記簿)に記録されます。誰でも手数料を払えば内容を確認でき、登記記録は次の3つの部分でできています。

部分記録される内容
表題部不動産の「物理的な情報」。土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・構造・床面積など。
権利部(甲区)所有権に関すること。誰が所有者か、いつ取得したかなど。
権利部(乙区)所有権以外の権利。抵当権(住宅ローンの担保)などが記録される。
注意:登記には「公信力」がない

登記の内容を信じて取引しても、もしその登記が真実と違っていた場合、原則として保護されません。これを「登記に公信力(こうしんりょく)がない」といいます。一方で、登記をしておくと「自分が権利者だ」と第三者に主張できる効力(対抗力)はあります。「公信力なし・対抗力あり」がポイントです。

不動産の価格4種

同じ土地でも、目的によって複数の「公的な価格」が使われます。FP3級では次の4つを区別できることが大切です。

価格の種類基準時点主な利用目的価格水準の目安
公示価格
(国土交通省)
毎年1月1日一般の土地取引の指標100%(基準)
基準地標準価格
(都道府県)
毎年7月1日公示価格を補う取引の指標公示価格と同水準(100%)
相続税路線価
(国税庁)
毎年1月1日相続税・贈与税の計算公示価格の約80%
固定資産税評価額
(市町村)
1月1日
(3年ごとに評価替え)
固定資産税・不動産取得税など公示価格の約70%
たとえ話:同じ人でも「呼び名」がちがう

1つの土地は、見る人(役所)によって呼び名と値段が変わります。取引の目安なら「公示価格」、相続税を計算するなら「路線価(公示の約80%)」、固定資産税なら「固定資産税評価額(公示の約70%)」。「路線価8割・固定資産税7割」の数字はそのまま覚えてしまいましょう。

2. 不動産の取引 ― 宅建業法と手付金

不動産の売買や仲介を仕事にする業者は、宅地建物取引業法(宅建業法)というルールに従います。FP3級ではそのさわりを押さえます。

媒介契約(ばいかいけいやく)

家を売りたい人が不動産会社に「買い手を探して」と依頼する契約を媒介契約といいます。次の3タイプがあります。

種類他社へも依頼自分で見つけた相手と契約
一般媒介契約○ できる○ できる
専任媒介契約× できない○ できる
専属専任媒介契約× できない× できない(必ず業者を通す)

重要事項説明

契約の前に、宅地建物取引士が、買い手や借り手に対して物件の重要な内容(権利関係や法令上の制限など)を説明します。これを重要事項説明といい、宅地建物取引士が記名した書面を交付して行います。「契約してから後悔しないように、事前にしっかり説明する」しくみです。

手付金(てつけきん)

手付金のしくみ(解約手付)

売買契約のときに買主が売主へ渡すお金を手付金といいます。相手が契約の履行に着手するまでは、次のように契約を解除できます。
買主から解除 → 渡した手付金を放棄する(あきらめる)
売主から解除 → 受け取った手付金の倍額を返す(倍返し)

3. 借地借家法 ― 借りる人を守るルール

借地借家法(しゃくちしゃっかほう)は、土地や建物を借りる人(立場が弱くなりがち)を守るための法律です。FP3級では、建物を借りる「借家(しゃくや)」の2タイプの違いを押さえましょう。

項目普通借家契約定期借家契約
契約の更新原則として更新される(借りる人に有利)更新されず、期間満了で終了
契約方法口頭でも可書面(または電磁的記録)で契約する必要がある
事前の説明不要「更新がない」ことを書面で事前に説明が必要
契約期間1年以上(1年未満は「期間の定めなし」扱い)自由に決められる(1年未満も可)
ざっくり言うと

普通借家は「住み続けたい人」に有利で、原則ずっと更新できます。定期借家は「期間を区切って貸したい」大家さん向けで、決めた期間が来たら必ず終了します。「定期=期間満了でおしまい・書面が必要」と覚えましょう。

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4. 都市計画法・建築基準法 ― 建蔽率と容積率

どこにどんな建物を建ててよいかは、法律でルールが決まっています。ここはFP3級の計算の山場です。

用途地域と接道義務

建蔽率(けんぺいりつ)

建蔽率は、敷地に対して真上から見た建物の広さ(建築面積)がどれくらいまでOKかを示す割合です。

建蔽率の式

建蔽率 = 建築面積 ÷ 敷地面積
→ 建てられる建築面積 = 敷地面積 × 建蔽率

計算例①:建蔽率

敷地面積200㎡、建蔽率60%の土地の場合、建てられる建築面積の上限は?
200㎡ × 60% = 120㎡
→ 真上から見て120㎡までの建物が建てられます(残り80㎡は庭などの空き)。

容積率(ようせきりつ)

容積率は、敷地に対して建物の各階の床面積を全部足した広さ(延べ面積)がどれくらいまでOKかを示す割合です。何階建てにできるかに関係します。

容積率の式

容積率 = 延べ面積 ÷ 敷地面積
→ 建てられる延べ面積 = 敷地面積 × 容積率

計算例②:容積率

敷地面積200㎡、容積率200%の土地の場合、建てられる延べ面積の上限は?
200㎡ × 200% = 400㎡
→ 全フロアの床面積を合計して400㎡まで。たとえば建蔽率の計算と合わせると、1階120㎡なら、おおよそ3〜4階建てくらいのイメージになります。

建蔽率は「広さ」、容積率は「ボリューム」

建蔽率は1階の影の大きさ(平面)、容積率は建物全体の延べ床(立体)をイメージすると混同しません。「蔽(へい)=建築面積/積(せき)=延べ面積」と漢字でひもづけるのもおすすめです。

5. 区分所有法 ― マンションのルール

分譲マンションのように、1棟の建物を区切ってそれぞれが所有する形を区分所有(くぶんしょゆう)といい、そのルールを定めたのが区分所有法です。

用語意味
専有部分各人が単独で所有する部分(自分の部屋の中など)
共用部分廊下・階段・エントランスなど、みんなで使う部分
敷地利用権建物の敷地を利用する権利。原則、専有部分と切り離して売れない
集会の決議(覚える数字)

マンションの大事なことは「集会」で決めます。建物を取り壊して建て替える建替え決議には、区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。「建替えは5分の4」と数字で押さえましょう(規約の変更などは4分の3以上)。

6. 不動産の税金 ― 取得・保有・譲渡

不動産にかかる税金は、①買ったとき(取得)②持っているとき(保有)③売ったとき(譲渡)の3つのタイミングで整理すると覚えやすくなります。

タイミングかかる主な税金
① 取得したとき不動産取得税(都道府県税)/登録免許税(登記のとき)/印紙税(契約書に貼る)/消費税(建物の代金。※土地の譲渡は非課税)
② 保有しているとき固定資産税(市町村税)/都市計画税(市街化区域内など)
③ 譲渡(売却)したとき譲渡所得として所得税・住民税(分離課税)
消費税のポイント

不動産でも建物の売買には消費税がかかりますが、土地の売買は非課税です。土地は「消費するもの」ではない、という考え方からです。

固定資産税・都市計画税(保有時)

その年の1月1日時点の所有者に課税されます。固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は最高0.3%(上限)で、いずれも固定資産税評価額をもとに計算します。

譲渡所得(売却時)

不動産を売って得た利益(譲渡所得)は、給与など他の所得と分けて課税(分離課税)されます。所有期間によって税率が変わるのが大きな特徴です。

譲渡所得の計算

譲渡所得 = 譲渡収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)
(取得費が不明なときは、収入金額の5%を取得費とみなせます=概算取得費)

区分所有期間(売った年の1月1日時点)税率の目安(所得税+住民税)
短期譲渡所得5年以下合計 約39%(高い)
長期譲渡所得5年合計 約20%(安い)
短期は高い・長期は安い

すぐ転売して利益を得る(短期)と税率が高く、長く持ってから売る(長期)と税率が下がります。「短期=ペナルティで高い」とイメージすると覚えやすいです。判定は売った年の1月1日時点で5年を超えているかがポイント(単純な丸5年ではない)。

居住用財産の3,000万円特別控除

自分が住んでいた家(マイホーム)を売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。所有期間の長短に関係なく使えるのが特徴で、これにより多くのケースで税金がゼロになります。たとえば譲渡所得が2,500万円なら、控除でまるごとゼロにできます。

7. 不動産投資の利回り

不動産を貸して家賃収入を得る投資では、「投資額に対してどれだけ稼げるか」を利回り(りまわり)で見ます。2種類を区別しましょう。

2つの利回り

表面利回り(グロス) = 年間家賃収入 ÷ 投資総額 × 100
実質利回り(ネット) =(年間家賃収入 − 年間経費)÷ 投資総額 × 100

具体例:利回りの計算

5,000万円で買った物件で、年間家賃収入300万円、年間経費50万円のとき。
・表面利回り = 300万 ÷ 5,000万 × 100 = 6%
・実質利回り =(300万 − 50万)÷ 5,000万 × 100 = 5%
経費を引く実質利回りのほうが、現実的な「手取りの効率」を表します。

注意:最新の数値は公式で確認を

税率・控除額・各種特例の要件などは、法改正で変わることがあります。路線価8割・固定資産税7割といった目安や税率は学習用の基準としてとらえ、実際の手続きでは国税庁・各自治体の公式情報を必ず確認してください。

おつかれさまでした! 不動産は「ルール(登記・法令)」と「税金(取得・保有・譲渡)」、そして「計算(建蔽率・容積率・利回り)」の3点セット。式さえ覚えれば計算は怖くありません。最後に確認テストでチェックしましょう!

✏️ 確認テスト(全6問)

〇か×で答えてみましょう。ボタンを押すと答えと解説が出ます。

Q1. 不動産登記には公信力があり、登記を信じて取引した人は必ず保護される。

正解は ×。登記には公信力がありません。登記を信じても、真実と違えば原則保護されません(ただし対抗力はあります)。

Q2. 相続税路線価は、公示価格の約80%が価格水準の目安である。

正解は 。路線価は公示価格の約80%(8割)、固定資産税評価額は約70%(7割)が目安です。

Q3. 敷地面積200㎡・建蔽率60%の土地に建てられる建築面積の上限は120㎡である。

正解は 。建築面積 = 敷地面積 × 建蔽率 = 200㎡ × 60% = 120㎡です。

Q4. 容積率は「建築面積 ÷ 敷地面積」で計算する。

正解は ×。容積率は「延べ面積 ÷ 敷地面積」です。「建築面積 ÷ 敷地面積」は建蔽率の式です。

Q5. 土地の売買には消費税がかかる。

正解は ×土地の売買は非課税です。消費税がかかるのは建物の売買です。

Q6. 自分が住んでいたマイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例がある。

正解は 。居住用財産の3,000万円特別控除です。所有期間の長短に関係なく適用できます。

📝 一問一答(全7問)

Q1. 抵当権など、所有権以外の権利が記録されるのは登記記録のどの部分?
A. 権利部の乙区です。所有権に関することは甲区、物理的な情報は表題部に記録されます。
Q2. 固定資産税評価額は、公示価格のおよそ何割が目安?
A. およそ7割(70%)です。相続税路線価は約8割(80%)です。
Q3. 他社にも依頼でき、自分で見つけた相手とも契約できる媒介契約は?
A. 一般媒介契約です。専任は他社NG・自己発見OK、専属専任は両方NGです。
Q4. 売買契約で、買主から手付解除する場合はどうする?
A. 渡した手付金を放棄します。売主から解除する場合は手付金の倍額を返します。
Q5. 接道義務では、敷地は幅員何mの道路に何m以上接する必要がある?
A. 原則、幅員4m以上の道路に2m以上接する必要があります。
Q6. 譲渡所得で長期と短期を分ける所有期間の境目は?
A. 売った年の1月1日時点で所有期間が5年超なら長期(税率が安い)5年以下なら短期(税率が高い)です。
Q7. 表面利回りと実質利回りのちがいは?
A. 表面利回りは年間家賃収入÷投資総額。実質利回りは経費を引いて(家賃収入−経費)÷投資総額で計算し、より現実的な効率を表します。

このレッスンのまとめ

今日の要点

・登記記録は表題部・甲区(所有権)・乙区(その他の権利)。登記に公信力なし・対抗力あり
・価格4種:公示価格(基準)/基準地標準価格(同水準)/路線価(約8割)/固定資産税評価額(約7割)。
・手付金は買主放棄・売主倍返し。定期借家は更新なし・書面必要
建蔽率=建築面積÷敷地面積容積率=延べ面積÷敷地面積
・税金は取得・保有・譲渡で整理。土地の売買は消費税非課税。譲渡は短期(高い)/長期(安い)、マイホームは3,000万円特別控除
・利回りは表面(家賃÷投資額)実質(経費を引く)

不動産の全体像がつかめれば、6分野もいよいよ終盤。次は財産を引き継ぐときの「相続・事業承継」を学びましょう。