🎯 このレッスンのゴール
- だれが相続人になるか(順位)と、法定相続分が分かる
- 相続の承認・放棄(単純承認・限定承認・相続放棄)の違いが分かる
- 遺言の種類と、遺留分のしくみが分かる
- 相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を計算できる
- 贈与税の暦年課税(年110万円)と各種の特例のさわりが分かる
- 宅地の評価(路線価方式・倍率方式)と小規模宅地等の特例を知る
人が亡くなると、その人の財産(現金・不動産・預金など)は、家族などに引き継がれます。これを相続(そうぞく)といいます。亡くなった人を被相続人(ひそうぞくにん)、財産を受け継ぐ人を相続人(そうぞくにん)と呼びます。まずは「だれが相続人になるのか」から見ていきましょう。
1. 相続の基礎:相続人と順位
だれが相続人になるかは、民法で決まっています。配偶者(夫または妻)は、いつでも必ず相続人になります。そのうえで、次の順位の高い人が配偶者と一緒に相続人になります。
・第1順位=子(子がいれば、子が配偶者とともに相続人)
・第2順位=直系尊属(父母・祖父母。子がいないとき)
・第3順位=兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)
上の順位の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。配偶者だけは、順位に関係なくいつでも相続人です。
相続というテーブルに、相続人が座るイスがあると想像してください。配偶者のイスは常に1つ用意されています。残りのイスは、順位のいちばん上のグループだけが座れます。子がいれば子グループが座り、父母や兄弟姉妹は座れません。子がいなければ次に父母、それもいなければ兄弟姉妹、と順番が回ってくるイメージです。
法定相続分(民法で定めた取り分)
相続人どうしで分ける割合の目安を法定相続分(ほうていそうぞくぶん)といいます。だれと一緒に相続するかで、配偶者の取り分が変わります。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | もう一方 |
|---|---|---|
| 配偶者 + 子(第1順位) | 1/2 | 子 全体で 1/2 |
| 配偶者 + 直系尊属(第2順位) | 2/3 | 直系尊属 全体で 1/3 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹(第3順位) | 3/4 | 兄弟姉妹 全体で 1/4 |
順位が下がるほど配偶者の取り分が増える(1/2 → 2/3 → 3/4)と覚えると便利。子や兄弟姉妹が複数いるときは、その「全体の取り分」を人数で等分します。
財産が6,000万円、相続人が「配偶者・子A・子B」の場合。
・配偶者=6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
・子は全体で1/2(=3,000万円)を2人で等分 → 子A・子Bは 各1,500万円。
(配偶者1/2、子それぞれ1/4ずつ、というイメージです。)
子がいない夫婦で、夫が亡くなり、相続人が「妻・夫の父・夫の母」の場合。財産は3,000万円。
・妻=3,000万円 × 2/3 = 2,000万円
・直系尊属(父母)は全体で1/3(=1,000万円)を2人で等分 → 父・母は 各500万円。
2. 相続の承認・放棄
相続では、プラスの財産(現金・土地など)だけでなく、マイナスの財産(借金)も引き継ぐことがあります。そこで相続人は、相続をどう受けるか(または受けないか)を選べます。方法は3つです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 単純承認 | プラスもマイナスも、すべての財産をそのまま受け継ぐ。とくに手続きをしないと、これになります。 |
| 限定承認 | 受け継いだプラスの財産の範囲内でのみ、借金などを返す。相続人全員で家庭裁判所へ申し出ます。 |
| 相続放棄 | プラスもマイナスもいっさい受け継がない。各相続人が単独で家庭裁判所へ申し出ます。 |
限定承認・相続放棄をするときは、自分のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申し出る必要があります。この期間に何もしないと、自動的に単純承認したことになり、借金も含めてすべて引き継ぎます。
3. 遺言(いごん・ゆいごん)と遺留分
自分の財産を「だれに、どう渡すか」を、生前に書き残しておくのが遺言です。遺言があると、原則として法定相続分よりも遺言の内容が優先されます。FP3級でよく出るのは、次の2つの方式です。
| 種類 | 書き方・特徴 | 検認 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が全文・日付・氏名を自書し、押印する(財産目録はパソコン等でも可)。費用がかからず手軽だが、形式不備で無効になりやすい。 | 原則必要(法務局保管なら不要) |
| 公正証書遺言 | 公証役場で、証人2人の立会いのもと公証人が作成する。費用はかかるが、形式不備の心配が少なく、紛失・偽造の恐れもない。 | 不要 |
「検認」とは、家庭裁判所で遺言の内容を確認する手続きのこと。公正証書遺言は検認が不要です。
遺言で「全財産を他人に渡す」と書かれていても、一定の相続人には最低限受け取れる取り分=遺留分が保障されています。遺留分が認められるのは配偶者・子・直系尊属。一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。ここは試験で頻出です。
父が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残したとします。このとき、母(配偶者)や他の子には遺留分があるので、最低限の取り分を請求できます。でも、もし相続人が「妻と亡き夫の兄」なら、兄には遺留分がないので、兄は遺言に対して取り分を主張できません。
4. 相続税
相続で財産を受け継いだとき、その額が大きいとかかるのが相続税です。ただし、ある程度の額までは税金がかからない「基礎控除」があるので、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。
課税の大まかな流れ
- 相続財産(プラス)から、借金や葬式費用(マイナス)を差し引いて、課税対象となる財産を計算する。
- そこから基礎控除を差し引く。残りがあれば、それが課税の対象(課税遺産総額)。
- 課税遺産総額をもとに相続税の総額を計算し、各人が受け取った割合に応じて負担する。
相続税の基礎控除は、次の式で計算します。これは必ず覚えましょう。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
財産がこの基礎控除額の範囲内なら、相続税はかかりません。
相続人が「配偶者・子2人」の合計3人の場合。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 3,000万円 + 1,800万円 = 4,800万円。
財産が4,800万円以下なら相続税はかからず、これを超えた部分が課税の対象になります。
配偶者が相続した財産については、1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。残された配偶者の生活を守るための、とても大きな軽減です。
相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行います。「3か月(放棄)」「10か月(相続税申告)」の数字を混同しないように整理しておきましょう。
5. 贈与税
生きている人から財産をタダでもらったときにかかるのが贈与税です。あげる人を贈与者、もらう人を受贈者といいます。原則の課税方法は暦年課税(れきねんかぜい)です。
暦年課税では、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から、110万円を差し引いて、残りに贈与税がかかります。つまり、1年間にもらった額が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。この110万円は「もらう人ごと・1年あたり」の枠です。
ある年に祖父から100万円をもらっただけなら、110万円以下なので贈与税はかかりません。一方、同じ年に父から200万円もらった場合は、200万円−110万円=90万円が課税の対象になります。
暦年課税のほかに、覚えておきたい制度・特例があります。FP3級では「名前」と「ざっくりした内容」をおさえれば十分です。
| 制度・特例 | ざっくりした内容 |
|---|---|
| 相続時精算課税制度 | 原則60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選べる制度。一定額までの贈与時の税負担をおさえ、贈与した人が亡くなったときに、その贈与財産を相続財産に加えて相続税で精算する。いったん選ぶと暦年課税には戻せない。 |
| 贈与税の配偶者控除 | 婚姻期間20年以上の夫婦間で、自宅(居住用不動産)またはその取得資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる。 |
| 教育資金の一括贈与の特例 | 父母・祖父母から、子・孫の教育資金をまとめて贈与した場合、一定額まで非課税になる特例。 |
| 住宅取得等資金の贈与の特例 | 父母・祖父母から、住宅を買う・建てるための資金を贈与された場合、一定額まで非課税になる特例。 |
非課税の限度額などの細かい数字は改正が多い部分。FP3級では「どんな特例があるか」をつかめればOKです。
6. 財産の評価
相続税・贈与税を計算するには、受け継いだ財産が「いくらか」を金額にする必要があります。これを財産の評価といいます。なかでもよく出るのが、土地(宅地)の評価です。
| 評価方式 | 内容 | 使う場所 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 道路(路線)ごとに定められた1㎡あたりの価格=路線価に、宅地の面積などをかけて評価する。 | 主に市街地 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域で、その土地の固定資産税評価額に、一定の倍率をかけて評価する。 | 路線価のない地域 |
「市街地は路線価方式、それ以外は倍率方式」とセットで覚えると整理しやすいです。
亡くなった人が住んでいた自宅の土地などを、一定の要件を満たす親族が相続した場合、その宅地の評価額を大きく減額できる特例です(居住用の宅地では、一定面積まで評価額を80%減額=2割の評価でよい)。残された家族が、税金のために住む家を手放さずに済むようにするためのしくみです。
このページの控除額・税率・面積などの数値は、学習のための目安です。税制は毎年のように改正されるため、実際の手続きの際は国税庁などの公式情報で最新の数値を必ず確認してください。
おつかれさま! 6分野を完走です 🎉
これで――ライフプランニング → リスク管理 → 金融資産運用 → タックスプランニング → 不動産 → 相続・事業承継という、FP3級の6分野をぜんぶ一周しました。最初はバラバラに見えたお金の知識が、「人生のお金まわり」という1つの地図につながったはずです。
とくに相続は、法定相続分の計算と基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)が頻出。手を動かして数字を出す練習を、繰り返しておきましょう。
確認テスト
○か×かで答えてみましょう。タップすると答えと解説が出ます。
Q1 配偶者は、子や兄弟姉妹がいる・いないにかかわらず、つねに相続人になる。
○。配偶者は順位に関係なく常に相続人です。そのうえで第1順位=子、第2順位=直系尊属、第3順位=兄弟姉妹の順で、いちばん上の順位の人が配偶者とともに相続人になります。
Q2 相続人が「配偶者と子」のとき、配偶者の法定相続分は2/3である。
×。配偶者と子のときは、配偶者1/2・子(全体で)1/2です。配偶者が2/3になるのは「配偶者と直系尊属」の組み合わせのときです。
Q3 相続放棄や限定承認は、自分のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申し出る必要がある。
○。期限は3か月以内。この間に何もしないと、原則として単純承認(すべて受け継ぐ)になります。
Q4 遺留分は、配偶者・子・直系尊属だけでなく、兄弟姉妹にも認められている。
×。遺留分が認められるのは配偶者・子・直系尊属で、兄弟姉妹には遺留分がありません。頻出のひっかけです。
Q5 法定相続人が3人のとき、相続税の遺産に係る基礎控除額は4,800万円である。
○。3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
Q6 暦年課税の贈与税では、1年間にもらった財産から、もらう人ごとに210万円を差し引いて計算する。
×。暦年課税の基礎控除は年110万円です。1年間にもらった額が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要です。
一問一答
クリックで答えが開きます。サッと確認しましょう。
Q. 相続人の順位を、第1〜第3順位で言うと?
Q. 「配偶者と兄弟姉妹」が相続人のとき、配偶者の法定相続分は?
Q. 相続放棄・限定承認の期限は?
Q. 公正証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要?
Q. 遺留分が認められないのは、どの相続人?
Q. 相続税の遺産に係る基礎控除額の計算式は?
Q. 相続税の申告・納付の期限は?
まとめ
・相続人=配偶者は常に相続人+第1順位 子/第2順位 直系尊属/第3順位 兄弟姉妹
・法定相続分=配偶者と子は1/2:1/2/配偶者と直系尊属は2/3:1/3/配偶者と兄弟姉妹は3/4:1/4
・承認・放棄=単純承認・限定承認・相続放棄。放棄・限定承認は3か月以内
・遺言=自筆証書/公正証書(検認不要)。遺留分は兄弟姉妹にはない
・相続税の基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数、配偶者の税額軽減、申告は10か月以内
・贈与税=暦年課税の基礎控除年110万円、相続時精算課税・配偶者控除・各種非課税の特例
・宅地の評価=路線価方式(市街地)・倍率方式、自宅は小規模宅地等の特例で大きく減額